【ナミヘビ科・ヤマカガシ属】
【活動時間】昼行性
【分布】北海道、南西諸島以外の日本全土
ヤマカガシは日本の固有種とされ、全長70cm~140cm程に成長する日本では中型~やや大きめのヘビである。平地から標高の低めの山地、主に水辺や湿地周辺に生息しており、昼行性でカエルを主に捕食するため河川敷や田んぼなど水場周辺に行った際などは出くわすことがある。
腹盤の両端に側稜(そくりょう)をもち、これを引っかけることで壁や樹上をよじ登ることが出来るが、地表性の傾向が非常に強く、樹上によじ登るようなことはほとんど無い。
毒蛇特有の『三角頭』はしておらず、比較的細い丸型。体色は褐色の地に赤色と黒色の斑紋を交互に持つカラフルな見た目が一般的な特徴ではあるが、その体色は地域によって偏りがある。また、ヤマカガシには変種が極めて多く斑紋が確認しづらかったり、ほとんど無いものもいる。(黒化した固体の画像等はこちらのサイトが非常に分かりやすい。)
群馬県では白化した(アルビノ)固体も見つかっている。
体色の他にはパッチリと丸い目も特徴として挙げられる。
毒の有無
ヤマカガシは有毒でその毒は強く、ハブの有する毒のおよそ10倍(マムシの3倍)強力である。毒は出血毒であるが、ハブやマムシの出血毒とは異なり咬まれても腫れや痛みはあまり無く、すぐに症状が現れるといったことは無い。
ヤマカガシの毒は主に血液凝固作用で、血液を凝固させることで凝固因子を消費させ、逆に血液が止まらないようにし、さらに、血管系の細胞を破壊することで出血させる。これにより咬傷被害から数時間ほど経過した後、血圧降下、腎機能障害、全身に皮下出血、内臓出血などがおこり、重症化すると脳内出血、腎不全によって死に至ることがある。
ヤマカガシは後牙類(こうがるい)で口腔の後方に牙を持ち、当然毒牙を用いて毒(唾液)を注入するが、首の付け根あたりの表皮にも毒を持ち、表皮の毒は液状の状態で飛ばすことができる為注意が必要。
咬まれたときの対処法
おとなしい性格の固体が多いヤマカガシ。マムシに比べ咬傷被害はとても少ないが、こちらがちょっかいを出せば咬んでくる攻撃性は持ち合わせているため、下手に手は出さないほうが良い。
前述した通り、ヤマカガシは毒性が強くマムシの有する毒の3倍。
咬まれた後、すぐに症状として現れる身体の異常は無い。そのためあらかじめ知識として知っておかないと咬まれたのがヤマカガシであるということに気づけず、咬傷被害から数時間ほど経過した後、血圧降下、腎機能障害、全身に皮下出血、内臓出血などがおこり、そこで初めて何かおかしいと気がつくことになってしまう。
もし特定できないヘビに噛まれたらすぐに症状が確認できなくても、ヤマカガシかもしれない。と疑うことが第1歩。そして必ず病院に行くこと。冒頭で記述した通りヤマカガシには変種が極めて多く斑紋が確認しづらかったり、ほとんど無いものも存在する。
もしヤマカガシに咬まれていたとするならば、回復したとしても放置しておくと何らかの後遺症などが残る確率は高く、重症化すると脳内出血、腎不全によって死に至ることがある。
また、ヤマカガシの場合は早めに病院へ行かないと血清が用意できない可能性が非常に高いので、咬まれた場合はできるだけ早く医療施設で手当を受けることを心がけよう。
さらに、マムシと違いヤマカガシによる咬傷被害はその頻度が少ないため、受診先の病院が適切な処置を行ってくれるか、知ってくれているかは怪しい点がある。
病院によっては常備されているマムシ毒の血清とは違う、ヤマカガシ毒の血清が必要となり、常備されている病院はほとんど無い。ヤマカガシ毒の血清は一般財団法人日本蛇族学術研究所が有しており、ジャパンスネークセンターへ連絡をとる必要があるので、ヤマカガシに咬まれてしまった、咬まれたかもしれないと心配な場合は迷わず連絡しよう。
また、血清を開発した日本蛇族学術研究所は同研究所が運営するジャパンスネークセンターによる収益で支えられているが、その経営はかなり厳しい状況で、また研究者も不足している状況らしく今後の経営に不安があるよう。余裕と興味のある方は寄付などしてみると良いかもしれない。
応急処置
応急処置としては、噛まれた部位より心臓側の部分をタオルなどで結び「ゆるめ」に圧迫する方法がある。噛まれたところから口で毒を吸いだす等は絶対にしないほうが良い。口の中に毒が残ることがあったり、口の中には自分では気づかない口内炎などのキズがある場合が多く、虫歯や口内炎などのキズから毒が進入する恐れがあるからである。また、それを他人にしてもらった場合は二次災害の可能性まである。
早めに病院へ行かないと血清が用意できない場合があるので、咬まれた場合はできるだけ早く医療施設で手当を受けることを心がけよう。
他に、ヘビに咬まれてしまった場合の詳しい対処法はこちら。
ヤマカガシは毒を飛ばす!?
ヤマカガシは毒牙を用いて毒を注入するだけではない。
首の付け根あたりの表皮にも毒を持ち、表皮の毒は液状の状態で飛ばすことができるようになっている。
ヘビと言えば咬傷被害をすぐに思い浮かべるかもしれないが、実は毒を液状の状態で飛ばすことの方が注意しなければならない。
というのも、飛ばされた毒が目に入ってしまうのが最も危険で、病院でも対処が難しいからである。もしその様なことがあれば、何らかの目の不自由が残る覚悟を余儀なくされるかもしれない。
未然に防ぐには
ヤマカガシは首の付け根あたりの表皮に毒を持つことが起因なのか、威嚇の方法が少し特殊。敵に対して背中を向けて少し反り上がり、起き上がった背中をコブラのように広くし(コブラほど広がらないが)威嚇する。
ヘビがこちらに気づいているであろう状況で、少し反り上がり反対側を向く(背を見せる)とあなたは威嚇されている事になる。
人間にとっては威嚇に見えにくいかもしれないが、ヘビが反対方向を向いたまま立ち去る気配がなければヤマカガシだと判断してその場を離れたほうが良い。
いつ首裏の表皮から貴方に向かって毒が飛ばされるか分からないため、咬みつかれるほどの距離ではないと安心しないことが被害に遭わないために重要である。
ヤマカガシが実際に威嚇をしている参考動画