ヘビを食べる前に知っておきたいこと
まず、ヘビを食べる前の下知識として必ず押さえておきたいことがある。
それは、ヘビ(爬虫類)の肉には寄生虫がついてある場合が多いということである。野生のヘビだけでなく、ペットとして飼っているヘビも同様だ。
具体的にどんな種類の寄生虫がいるかといえば
・サナダムシ
・エキノコックス
・アニサキス
・トキソプラズマ
・マンソン裂頭条虫
・横川吸虫
・顎口虫
・サルモネラ菌
・クリプトスポリジウム菌
等々、その他よく分からない孤虫(成虫が判明していない寄生虫の幼虫)や微生物も含めると、まだまだ沢山の種類の寄生虫を宿している可能性があるため注意が必要だ。
寄生されると
人間が寄生虫に”宿主“とされてしまうと様々な症状が表れ、最悪の場合は死に至ることがある。
・寄生虫に寄生された場合
症状を全く自覚しないことが多く、すぐには危篤な健康被害が表れるわけではないが、胃など消化器官に寄生しつづける場合は下痢や腹痛、吐き気などを催すことがある。また、卵を摂取、あるいは体内に産み付けられてしまった場合は小腸で孵化し、嚢虫(のうちゅう:サナダムシなどの寄生虫の幼虫)が血流に乗って体内にばらまかれ身体の様々な部位に入り込む、嚢虫症を発症する。嚢虫症は寄生先の部位に症状を引き起こし、寄生先が筋肉や皮膚の場合ではしこりができ、眼球の場合では視力障害、失明。脳の場合ではけいれん、意識障害、四肢麻痺を引き起こし、最悪の場合死に至る。
また、寄生虫が血液中に存在することになるので細菌感染を併発したり、アレルギー反応を起こす事もある。
・微生物に寄生された場合
食中毒や感染症などを引き起こし、頭痛、腹痛、発熱、おう吐、下痢、血便など様々な症状を催す。早い段階で症状が表れるものもあるが、潜伏期間は(早いもので)およそ8時間~(遅いもので)8日程である。自己治癒するものもあるとされているが、免疫機能の低下した人では重症化し、感染症が直接の死因となる場合がある。国内でも死亡例が認められており、サルモネラ菌に関していえば食中毒による死亡は増加傾向にある。
寄生虫を殺す(不活化させる)
ここまでで、寄生虫に”宿主”とされる事の危険性は理解頂けただろう。
本来であれば食さないを上回る衛生対策は無いのだが、食糧難などサバイバル環境で「どうしても」という時はそうも言っていられない。自然の中では貴重なタンパク源であることも事実で、味も悪くない。言わば”ごちそう”の類だ。しかし決して興味本位程度では食さない方が良いという事を先に言っておく。それを理解した上で自己責任で行動して欲しい。
とにかく加熱
寄生虫に対して最も有効な予防方法は加熱することである。
寄生虫や微生物のほとんどは、熱に弱いもので50度で5分、熱に強いもので75度で5分程度でその99.9%が不活化するとされている。
不活化させるには凍結処理という手段もあるが、寒さに強い寄生虫の場合マイナス80度で2時間以上という条件であるため、自然の中では(家庭レベルでも)現実的ではない。
安心してヘビを食べようと思えば必ず中心まで火を通すことが重要である。半生の状態で食べたり、生食などは素人のヘビ肉の処理のもとではもってのほかである。
ヘビを食べる際は目に見える寄生虫は取り除き、直火でしっかり焼き上げるか煮沸を5分以上行ってから口に入れるように心がけよう。
ヘビの下処理
1・頭を落とす
首元を押さえつけ、一瞬で頭をおとす。
この時躊躇して中途半端にしてしまうとヘビが苦しむことになるので、できるだけ素早く、一瞬で頭をおとすようにしよう。
(注※ヘビは頭を切り落として1時間経過しても口をパクパク動かすため切り落とした後に咬まれないよう注意が必要。)
中国では高級レストランの料理人が20分前に切り落とした頭に咬まれ死亡した実例がある。
2・皮をむく
頭を落としたら頭からしっぽに向けて皮を剥いていく。
頭を切り落とした後、首元に縦に2~3cm程切れ目を入れると皮が剥きやすくなる。
手で簡単にずるずるとキレイに剥けるが、皮を剥くほうの反対の押さえる手がヘビ肉のぬめりや血ですべりやすいため、タオルやキッチンペーパーなどを使い押さえると良いだろう。
このときヘビの内臓は皮と一緒に取れるが、内臓が残った場合はすべて取り除こう。(注※内臓は食べることが出来る部位もあるが、素人の処理、判断では危険なので絶対に食べないこと。)
3・水で洗う
ヘビ肉の生臭さの一因となる体内の膜を水で血を流しながら引っ張ってはがす。
このとき目に見える寄生虫がいた場合は全て取り除くようにしよう。
以上でヘビ肉の完成となる。
後は好きなサイズに切り、火を通して食べるだけである。
種や個体によって味や臭みに差があるが、基本的に味という味は無く鶏肉をさらにあっさりとした感じである。
また、肉なので調理法は他の肉と同じ数だけ存在するが、煮て食べるのは生臭さが残りやすいためあまりオススメはしない。薬味となるような香草をいれた方が良いだろう。
野外での下処理の場合は切り落とした頭、内臓、皮は箱などに入れ安全に持ち運べる状態にし持ち帰るか、咬まれない様注意して土に埋めて供養すること。(注※土に埋める際はその土地のルールに従うように。)
ヘビ料理専門店
ここまでヘビを食べるために「自分で」処理することを前提に危険性と処理方法を掲載したが、実は中国、その他の国、地域によって「ヘビ肉」はごく一般的な食材として扱われている。
興味本位で食べたいのであれば、ジャパンスネークセンターの食堂や、専門店に食べに行くことを勧める。
ジャパンスネークセンターの食堂はサービスが良く、自分がこれから食べる生きた段階のヘビを触らせてくれたり、その後の処理(頭を落としヘビを肉にする過程)も見せてくれたりするので非常に楽しむことができる。興味本位で食べたい人はまさにもってこいな空間である。
未経験の人は想像もしないようなメニューや、ややグロテスクなメニューの存在に驚くことになるだろう。