【クサリヘビ科・マムシ属】
【活動時間】夜行性
【分布】日本全土(沖縄、奄美など亜熱帯の島々以外)
マムシは40cm~90cm程の中型のヘビである。
平地から山地の森林、草原、河川敷などに生息している。夜行性なので夜になると獲物を探しに徘徊し、日中は藪や茂みの中、岩陰、石垣や倒木の下といった少し湿り気のある陰などに身を潜めるが、日光浴をしている姿もしばしば見られる。
地表性の傾向が非常に強く、樹上によじ登るようなことはほとんど無い。
体色は茶褐色で、赤みを帯びた固体もおり、毒蛇特有の『三角頭』で(個体差があるが)メガネ模様と言って楕円形の斑紋(丸描いてちょんの斑点)を持つのが特徴。蜂や毒をもつ昆虫などの警戒色の様に、危なそうな模様の柄なので見つけた時は本能的に『あ、こいつ毒もってるな』と感じやすい。但し、中には楕円形の斑紋を持たない個体や、白化固体、黒化固体も存在する為、体色や模様だけでマムシかどうか判断するのはやめた方が良い。ひょろひょろっとしたスレンダーな体型ではなく、ずんぐりと体の長さに対して胴が太いのも特徴の一つである。
またアオダイショウ、シマヘビ、ジムグリの幼蛇と似ており、しばしば間違われることがあるので注意が必要。(参考画像下)
毒の有無
マムシは有毒で、春~秋に多くみられ、特に夏季になると藪や茂み、田畑に頻出し、咬まれる被害が増えるので注意が必要。マムシの毒は主に出血毒で、タンパク質を溶かし血管組織を破壊していくことが知られている。
毒蛇は全て、唾液に毒があり、毒牙を用いて毒を注入する。
マムシの場合は前牙類(ぜんがるい)といい、口腔の前方に牙を持ち、毒性が強くハブの有する毒の3倍強力である。
特別、マムシは攻撃的な性格であるというわけではく、むしろ臆病なタイプだ。が、触れずとも近づいただけで咬みついてくることがあるので、マムシのパーソナルスペースには立ち入らないようにした方が良い。触ったり、棒でつついたりするとほぼ100%咬みついて来る。マムシの攻撃範囲は50cm程なので、1メートル以内に近寄らないように心がけておけば被害を回避することが出来るだろう。
咬まれたときの対処法
前述の通り、マムシは毒性が強くハブの有する毒の3倍。
年間2000人以上が咬傷被害に遭い、その内の10人前後が命を落としている。
咬まれた後、症状としてすぐに激しい痛みを伴い、咬まれた部分が腫れて紫色になっていく。出血毒で、血液凝固を阻害して細胞を破壊していくため、筋壊死を起こし、頭痛、発熱、吐気、めまい、しびれ、血圧低下、視力低下、急性腎不全による乏尿、血尿など様々な症状に見舞われることになる。しびれなどが完治するまで1カ月程かかるが、重症化してしまうと腎不全となり死に至ることがある。
もし噛まれたら必ず病院に行くこと。それが結婚式の最中だろうが葬式の最中だろうがすぐに抜け出して直行すること。(例えは冗談だが急げという点では本気である。)
時間が経つにつれて毒は全身にまわっていく。噛まれたからすぐに死ぬということは無いが、放置しておくと何らかの後遺症などが残る確率は高い。
応急処置
応急処置としては、噛まれた部位より心臓側の部分をタオルなどで結び「ゆるめ」に圧迫する方法がある。噛まれたところから口で毒を吸いだす等は絶対にしないほうが良い。口の中に毒が残ることがあったり、口の中には自分では気づかない口内炎などのキズがある場合が多く、虫歯や口内炎などのキズから毒が進入する恐れがあるからである。また、それを他人にしてもらった場合は二次災害の可能性まである。
早めに病院へ行かないと血清が用意できない場合があるので、咬まれた場合はできるだけ早く医療施設で手当を受けることを心がけよう。
他に、ヘビに咬まれてしまった場合の詳しい対処法はこちら。
ペットの散歩中も要注意!!
マムシに咬まれる事が多いのは人間だけではない。犬や猫などのペットも咬傷被害の報告がしばしば見られることがある。
2本の矢印の場所がマムシに咬まれた跡。
犬は鼻を近づけ匂いを嗅ごうとする習性から顔を咬まれる確率が高く、猫は前足で相手を探る習性から前足を咬まれることが多い。
犬や猫はヘビの毒に対して人間よりも耐性をもっているので、死ぬことは滅多に無いとされているが、老犬など体力の落ちている状態だとその限りではない。抗生物質による副作用に耐えるだけの体力が残ってなさそうな場合は打つ手がなくなり、祈るだけになってしまうことがあるため特に注意が必要。
また、本来であれば何も処置を行わなくても1ヶ月程で回復していくはずのものが、抗生物質の注射によってアナフィラキシーショックを引き起こしてしまう可能性があるため、処置を行うべきか、何もしない方が良いか、飼い主にとっても苦渋の選択を迫られることになる可能性がある。
以上のようなことを避けるために、最も重要なのは”咬まれない事”である。
散歩中に、むやみやたらに草むらや茂みに入らせない。危ないかもしれないと感じたら力ずくでリードを引っ張り草むらから遠ざけさせるなどの飼い主の対応が最も重要になる。特にマムシの活発な夏季になると藪や茂み、田畑に頻出する為、注意が必要である。